マーケティングなんて?

「このミニコンポの新商品、売れると思いますか?」と商品開発担当者。
「いくらで売る予定ですか?」と私。

「99,800円ですが・・・」
「えっ?これがキュウキュウパッ? これは売れますよ!」
「・・・本当ですか?」
「もちろん。で、生産予定は何台くらいですか?」
「○万台です」
「えっ?たったそれだけ?10倍とは言いませんが、その3倍くらいは売れますよ」
「・・・本当ですか?○万台でも多いと思ったのに・・・」

AV家電メーカーにいたころの話です。
当時、私は営業マンから営業企画部門に転属したころで、まだ営業最前線の感覚は自負していました。

ある時、商品開発部門から新商品の社内向け内覧会がありました。
これはその時の会話です。

2~3年ヒット商品がなく、開発部門担当者は少々自信を失っていました。
恐らく営業部門の偉いさんから、「売れる商品を作れ」と散々言われていたと思います。

結果、この商品はめちゃくちゃ売れました。
しばらく3ヶ月待ちの状態です。予想よりはるかに売れたのです。
まあ、ここまでは良かったのでしょう。
(正しくは、あまり良くありません。本来、あるべきマーケティングは、販売予想≒生産台数≒実売数ですね)

ところが、この後がいけなかった。

売れると思った各営業所は、注文をどんどん出します。もちろん小売店からの注文があるからです。
その数は、実売予想の3~5倍くらいになっていました。
よせば良いのに、それを真に受けて一気に大増産。

しかしオーディオ商品のヒットは長く続きません。半年で旧モデルになる世界。
あっという間に在庫の山です。

どこに問題があったのか?

小売店は、売れる商品が欲しい。確保したい。
そこでメーカーの営業マンに、商品をかき集めるように注文を出す。

営業マンも、自分の数字(毎月売上目標がある)が欲しい。
本部に対して「もっと増産してくれ~」と要望する。

本部は「本当にそんなに作って大丈夫か?」と聞く。
営業は「もちろんだ。バンバン作ってくれ」と返す。

ならば増産しよう。
・・・ヒットが終わり在庫の山。

このパターンで思い出されるのは「たまごっち」です。
この時バンダイは大増産を行い、結果、不良在庫なんと250万個を処分し60億円の損失計上をしたとか・・・。

マーケティングには「読み」という面があります。
過去のデータ、世の中のトレンド、そして研ぎ澄まされた勘で、販売予測を立てます。
予想通り売れれば、生産と販売のバランスがよく利益になりますが、予想を外すと、とんでもないことになる場合もあるのです。

いまやマイニング全盛。
ですが最後は、人間の勘と決断力がモノを言うと思います、いまの所は・・・。