レナウンの倒産から経営実務を学ぶ(2)アパレル業界とデパートの関係性とは
前回 レナウンの倒産から経営実務を学ぶ(1)新型コロナがアパレル業界のサイクルを乱す
からの続きです。
アパレル業界全体が抱える問題
たまたま今回はレナウンという業界大手の倒産ですが、もともと経営体力が脆弱だったことは否めません。
では、ほかのアパレル会社はどうでしょうか。
実は多くの会社が似たような状況に陥っています。
緊急事態宣言でデパートが休業となり、売上が全くなくなりました。
さらに夏物、秋物が納品できない状態、つまり「売るモノがない」という深刻な事態となっています。
当然、資金繰りはかなり厳しい状況にあります。
そこで多くのアパレル会社が、売り場からの撤退や縮小を申し入れているようです。
デパートの家賃が払えない
そもそもデパートは「場所貸し商売」です。
アパレル会社が一定のスペースを借り、その会社のスタッフ(マネキンさん、ヘルパーさん、ハウスマヌカン、ファッションコーディネーターなどと呼ばれるアパレル会社の社員もしくはパートさん)が売り場で仕事をするという形態をとっています。
例えばファッションフロアには、多くのブランドの店舗があります。
これらのほとんどは、アパレル会社が場所を借りて、家賃を払っているのです。
したがって、
売上がない ⇒家賃が払えない ⇒スタッフの人件費が払えない ⇒撤退やむを得ず
という構図です。
デパート側の事情は?
しかし、デパート側としては、売り場から撤退されるのは大変困ります。
日本百貨店協会の調べによると、2019年1月~12月の衣料品の売上構成比は、紳士服・婦人服・子供服などを含めて29.3%もあります。
参考:令和元年12月 全国百貨店売上高概況(PDF)-日本百貨店協会
https://www.depart.or.jp/press_release/files/0112.pdf
8ページに2019年1月~12月の売上高速報が出ています。
アパレル会社が撤退するということは、これだけの大きな売上を占める衣料品売り場が「歯抜け」状態になるということです。
それでは魅力ある売り場にはなりません。もちろん家賃収入も入りません。
これだけでもデパートにとって大問題です。
インバウンド消費もなく存亡の危機
さらにデパートは独自の問題を抱えています。
ここ数年、デパートの多くは「インバウンド」、つまり中国人などの外国人消費で売上を稼いでいました。
デパートはこの30年間にどんどん縮小撤退を繰り返し、10年ほど前に経営統合が進み、なんとか事業継続をしていました。
そこにインバウンド需要が到来し、一時はデパートも再建しつつありました。
インバウンドの売上構成比は、デパートにもよりますが7%~10%と言われています。
しかし、中国からの観光客がほぼ途絶えている現状では、インバウンド消費は期待できません。
このように、アパレルの危機とインバウンドの激減は、デパートそのものの存亡にかかわる事態となっています。
中国のアパレル製造工場の事情
日本からの発注が来ない中国のアパレル工場も経営の危機にあります。
中国は新型コロナの制限解除後、リベンジ消費などが報じられています。
しかし、世界的な中国への発注減で、今後深刻な不況が来ると思われます。
このように世界は連動しているのです。
早く新型コロナウイルスが終息することを願うばかりです。