「事業改善計画書」と格闘中!

経営が厳しい企業に対して、民主党政権が打ち出した政策に「中小企業金融円滑化法」というのがありました。これは昨年(平成25年)3月末に終了しました。

法の主旨は、「経営環境が厳しい企業は、金融機関の借入金返済について、一時的に元金返済を止め、金利だけの返済という条件に変更してもらいなさい。その間に企業の体質改善を進めなさい。金融機関は申し入れがあったら、無条件に相談に乗ってあげなさい。」そんな法律でした。

円滑化法は約3年4か月にわたり施行されました。その間に全国で50万社以上が利用したと言われています。
さて、これらの企業は、法の主旨に則って立ち直りができたのか?

現実は、問題の先送りだけであり、ほとんどの企業(おそらく95%以上)は、元金返済どころか、金利返済もままならない状況に陥っていると思われます。

これを引き継いだ安倍政権は、アベノミクスの失速を避けるために、何がなんでも中小企業の活性化を進めようとしています。

そこで政府は、円滑化法を利用した企業に対し、今後どのように経営をするか、金融機関が相談に乗ってあげなさい、という指示を出しています。
「事業改善計画書」をしっかりと作成し、金融機関と十分に打合せをしたら、「金融支援」をしてあげなさい、ということになっています。

流れとしては、メインバンクが社長と相談し、再生支援協議会または再生支援センターを交えることに同意したら、「専門家」(国から認定された税理士や経営コンサルタントなど)を社長の相談役として、事業改善計画書を作成します。
専門家の費用の一部は国が助成します。

この「事業改善計画書」というのが、やっかいです。
本来は社長が作成するべきものですが、かなり細かな内容で、税理士の先生や経営コンサルタントでも手こずるものです。
事業改善計画書の概要は、企業の概要、現状分析、財務上の問題点、改善の方向性と具体策、財務数字の裏付け、返済の見通しとその計画などとなります。

私はいま、2社の事業改善計画書を作成中です。
2社とも規模は年商2億~5億円程度で、それほど大きくはありません。比較的シンプルな構造です。それでも作成するには、かなりの時間を費やしています。
経営状態が悪くなった原因、今後経営改善を行うためにどのような取り組みをするかをしっかりと話し合い、実現可能性のあるものにしなければなりません。

ある程度この内容が詰まってきたら、いよいよ計画数字を作成します。
これがまたやっかいです。通常の経営計画で収益計画を作成するときは、損益ベースで単年度あるいは中期計画に落とし込んで終了です。
しかし経営改善計画では、貸借対照表と損益計算書、キャッシュフローまですべてに落とし込みを行うフォームになっています。

私はこの定型フォームに落とす前に、自分で作成したエクセルシートで検討します。
売上がどのくらい伸びたら、いつごろに利益がどのように出るか、その時の経費はどう見積もるか、設備投資をしたら、減価償却はどのように影響がでるか、税金はいくら納税するのか、元金返済はいつからできるか、などなど。
向こう10年間の計画を立てるのですから、かなり細かな作業をします。
表を作るだけでもかなりの作業ですが、そこから何度もシミュレーションをする方がより大変です。

2社のうちの1社。銀行に1回目に提出した数値計画が、売上の見通しが甘い、バラ色すぎると指摘されたため、2回目はぐっと現実的に、抑え気味のもので説明しました。
ところが今度は、もっと売上が伸びるのでは?、10年間で債務超過をなくしてくれ、というメチャクチャな要求が出てきました。債務超過は半端な額ではないため、さすがに「それは無理です」と応えましたが、銀行側は引きません。

仕方がないので、いまそのシミュレーションを行っていますが、やはりだいぶバラ色の計画を作らなければ難しい。なんのためにこんなことを繰り返しているのか、理解に苦しむのがホンネです。
そんなことで試行錯誤はまだまだ続きそうです。