カラオケが苦手です。なのに我が社の飲み会は、二次会はカラオケと決まっています。
雰囲気は嫌いではないのですが、自分も歌わないわけにもいかず、なんとなく毎回気まずい思いをしています。
私としては、楽しみながら飲んでいるだけでいいのですが・・・。
できれば歌わずに切り抜ける方法が知りたいです。
(39歳男性・流通)

 
マセ : そうですね、分かります。僕もほんとカラオケ苦手でした。
ミタ : はい。私も苦手です。何を歌っていいのかも分からないし。でも、カラオケボックスの場、独特の楽しさはありますよね。
マセ : そうだよね。あの雰囲気は、そこにしかないからね。

選曲が暗いと言われて・・・

マセ : 商社でサラリーマンやってた時代に、同期に連れられて、カラオケの店に行ったことがあって。
当時は、マスターがギターを弾いて、リズムボックスがあって。歌詞カードを見て歌う。
ギターがちゃんと合わせてくれてね。これはこれで気持ちいいの。

だけど僕、大学の時はジャズ研で、カラオケしたことがない。何を歌えばいいのか分からないんだよね。
ミタ : 演奏側ですもんね。

マセ : そう。でも、何か歌えって言われて。
で、『遠くへ行きたい』って曲を歌ったの。「♪知らない街を~」って。当時テレビで流れてたからね。
そしたら、みんなに「暗い」って言われて(笑)。もうカラオケが大嫌いだった。

同じ頃に、取引先で、業者を集めた飲み会があって。僕はまだ入社2年目か3年目。
若手だったから、「お前、行ってこい」って言われて。会社の代表で行ったの。

忘れもしない、わーっと大きな宴会場で。たくさんの業者が集まってて。
宴もたけなわで、カラオケが始まって。
僕、若かったから、「マセさん、トップバッターお願いします」って言われて。「えーっ!」って(笑)
ミタ : あはは。大役ですね。

マセ : 『遠くへ行きたい』は暗いって言われちゃうから、違う曲を、って考えて。
『そして神戸』を歌いました。 「♪こ~べ~」って(笑)
ミタ : いいじゃないですか(笑)
マセ : それで、まあまあ、ウケたんじゃないかな。『そして神戸』は、いまや僕のテッパンになってます。

歌えなくて、とっさに芽生えた芸

マセ : 話はさかのぼるんだけど、その商社に入った時にね、同期が22~23人いて。
で、2泊3日くらいで、研修旅行があって。

研修の時は、僕は一生懸命、研修を勉強しようとしてるんだよね。けっこう真面目だから(笑)
講師の先生が、名刺の出し方や挨拶の仕方を教えてくれて。それを一生懸命見て、覚えようとする。同期でお互いやってみて、良かったとか悪かったとか指摘し合って。
ミタ : はい。ありますね。

マセ : そんな感じで1日が終わって、夜。
部屋でなんかやろう、って盛り上がって。同期が歌を歌ったりしていた。マイクも何もないのに。
商社に来る人間って、みんなどっちかといえば芸人寄りなんだよね。関西出身者も多かったし。
僕なんか、何もやったことがないから、ちょっと引き気味で見ていた。

「マセ、お前も何かやれよ」って言われたんだけど、歌も歌えないし、何もできない。
で、ふと思い出した。
僕、研修で人の動きを一生懸命見てるもんだから、みんなの特徴をつかみ始めてたんだね。

それで、「○○課長のモノマネをやります」って、やってみた。そしたら妙にウケちゃった。
僕、嬉しくなっちゃってね。「じゃあ次は同期の△△くんの真似をします」って。またウケて。
ミタ : あはは。

マセ : どんどんやってたら、「モノマネのマセ」みたいになっちゃって。突然、芸が芽生えたの。
ミタ : 嬉しい誤算というかなんというか。

乗せられて、乗っちゃって

マセ : 研修が終わって配属されて。部署には課長と係長と主任がいて、先輩女性がいて。電話に出るのも緊張してる毎日で。
僕はまた、仕事を覚えなきゃいけないから、とにかくいろんな人の動きを見て。覚えて。
ミタ : どんどんインプットされていくんですね(笑)

マセ : そう。配属されて1か月くらい経った頃、新人歓迎会をやってくれて。10数人いたかな。
で、やっぱり、「新人、何かやれよ」ってなって。「じゃあ、モノマネやります」って。

とりあえず当たり障りのないところから。「事務の○○さんの真似をします」。課長に書類を渡す時の真似みたいな。
ミタ : 仕草なんですか。声まねじゃないんですね。

マセ : それが予想外にバカうけしちゃって。「あれっ、ウケちゃった」って。
「もっとやれ」って言われて、「じゃあ、△△主任の真似をします」。すぐそこに主任いるのに、電話の話し方の真似をしたの。そしたらまたバカうけ。
4~5人の真似をしたかな。案外、誰も怒らなかった。

ミタ : 新人の若い子だから許されるところありますもんね。
マセ : そうだよね。だからモノマネはその時がピークだった。

新人さん、大変ですよね

マセ : ただ僕、モノマネするために人を観察してたわけじゃないんだよね。
僕はいつも「キョロキョロしてる」って言われて。自分では意識してないんだけど、脳が勝手に情報を収集してるらしくて。
新人の頃は真っ白だから。人の歩き方や仕草まで、情報としてインプットしちゃったんだろうね。
ミタ : あ、そういうことなんですね。副産物というか。

マセ : 新人って、とにかく、なんにもないんだもん。仕事覚えようと思っても、現場の先輩も自分の仕事を持って動いてるから、ゆっくり教わってるヒマもない。
先輩に、「お前、とりあえずこれ持って、どこどこに届けて」って言われて。

「あのー、僕、向こうに行ったら、名刺出すんでしょうか?」
「当たり前だろ」
「どう言えばいいんですか」
「ちゃんと自分の名前を名乗って、それから、」

って、そんなところからなの。初めて行くんだもん。すっごい緊張するよね。
ミタ : そりゃそうですよね。はじめてのおつかいですね。

マセ : 今でも初めての会社に行くときは緊張するけど、新入社員じゃないからね。ぬけぬけと行けちゃう。
ミタ : だから新入社員は可愛いんですよね。
マセ : そうなんだよね。

下手でも大丈夫、みんな優しいです

ミタ : あのー、カラオケの話は?
マセ : あっ、そうそう。
お便りの方もおっしゃってますが、断ることもできなくはない、けど歌わないわけにもいかない時があります。
そこで、カラオケに代わる何かをやる、というのもアリなんですけど。

あえて僕がいいたいのはね、日本にカラオケ文化があって、カラオケは、業務の一環になっている。サラリーマンの必修科目なんです、残念ながら。
なので、とりあえず2~3曲は歌えるように練習しておきましょうよ。下手でもいいんです。人前で歌うのも恥ずかしい、よく分かる。

ミタ : 逆に下手な方が、次回からは勧められないかも。見てる方が辛い時ありますし。
マセ : 確かにね。
「○○さん、歌ってよ」 「私ですかあ、下手なんです」 「大丈夫大丈夫」。
イントロ流れる、「いいじゃん、いい曲じゃん」、で、始まりました。

音は外れる、テンポずれる。でも本人すごい頑張ってる。みんな辛い空気になる。
ミタ : ご本人は一生懸命ですから。

マセ : 間奏になって、周りが合いの手いれて。本人も、「あ、よかった」って感じになって。
2番を歌う。
ミタ : あはは。ありがちです。

マセ : みんなザワザワする。ご本人は一生懸命だから気づいてない。
ミタ : 全体的に微妙なあの空気は、嫌いじゃないですけどね。

マセ : いいの、それで。それをひっくるめて、カラオケなの。意外にみんな、優しいんです。
ミタ : そうですよね。人の優しさが垣間見える、それがカラオケ。ということにしまして。

余談ですが、歌マネします

マセ : 僕、自分の声がきれいじゃないと思ってるから。子どもの時からそうでね。
3歳の検診で、お医者さんに、「この子は声変わりしてるのかな?」って言われたくらいで。
ミタ : 3歳児、シブすぎですよ(笑)

マセ : だから、サザンの桑田くんが出てきた時は、画期的だった。僕が25歳くらいの時かな。
彼はそんなに美しい声質ではないよね。それでもウケた。

『チャコの海岸物語』が出て、それがなんとなく、僕の声に合ってて。
「♪きゃいぎゃんで わっきゃい ふちゃりがぁ~」って。
ミタ : あはは! めちゃくちゃ似てます。

マセ : 「♪えりぃ~」とか。
ミタ : それも似てます(笑)。確かに、声質が似た人を探す、っていうのはありますね。

マセ : うん。桑田くんは僕にとってカラオケの救世主なんだよね。
彼が出てきたから、「こんな声の僕でも歌っていいんだ」って、ちょっと自信がついた。
じゃなかったら、いまだにカラオケ歌えないかもしれない。
ミタ : はい。むしろ絶好調でした。

(2017年6月収録)

【今回のあなたに贈る3曲】
『チャコの海岸物語』 サザンオールスターズ (1982年)
『夏をあきらめて』 サザンオールスターズ (1982年)
『恋人も濡れる街角』 中村雅俊 (1982年)
マセの3大お得意ソングです。手前味噌ですみません。