[相手の立場になって考える]成果を出す営業マンになる 2. システム系の事例

前回に続き、「営業で成果を出す」ことについて考えます。

今回は、システム系のマーケターやコンサルタントといった肩書きを持つ営業マンのケースです。
ネット系システムはサブスクですから、ひとたび契約になれば会社として大きな収益源となります。

しかしシステム系の営業マンは若い方や女性も多く、案外苦戦しているのではないでしょうか?

やはりここでも「相手の立場で考える」「お客さまの立場に立つ」という、営業の基本中の基本が役に立ちます。

さらに「見込み客は人間である」という原点に立ち返ってみましょう。
そしてマーケティングの基本的概念の「顧客志向」そのものを理解しましょう。

「相手の立場になって考える」基本事例2

~MAシステムの営業担当のケース~

あるMAシステムのアウトサイドセールス(営業担当)、田中さん(仮名・女性)の事例です。

MAシステムとは、「マーケティング・オートメーション」の略です。

個人的な話ですが、MAシステムについて初めて聞いたときは、「ついにマーケティングもオートメーションでできる時代が来たのか!」と驚いたものでした。
確かに、ある程度のことをシステムがやってくれるので、非常に効率的な営業ができそうです。

ところが説明をよく聞くと、そのシステムを使いこなすためには、準備にかなりのエネルギーがいることも分かってきました。

そんなシステムの販売を担当しているのが、営業ウーマンの田中さんです。名刺には「コンサルタント」と書いてあります。
MAシステムを売っている会社ですから、当然、MAシステムが営業の根幹になります。

お客さま側の行動は?

これらのシステムを検討している会社やその担当者(リード)は、キーワード検索を行い、自分のメアドと引き換えに「いま話題のマーケティング・オートメーションは何か」(仮称)というホワイトペーパーを入手し、参考にします。

その後、プッシュで来るステップメールで、リードナーチャリングされます。
そして無料セミナー招待メールで、コンバージョン。

セミナーでは、MAとはどのようなものか、どのように役立つかを学べます。また、他社とのスペックや価格の比較検討も説明してもらえます。

セミナーでアポを取り訪問

MA会社としてのリアル接点はこのセミナーです。ここから田中さんの活躍する場面がやってきます。

「一度御社にお伺いして、実際に弊社のMAシステムの使い方をご説明したいのですが…」とアポを取りました。
そして当日、訪問します。

今回のリードは住宅会社。スタッフ数は15名程度。
この会社内でMAについて理解しているスタッフは、まだ誰もいません。

セミナーに参加したスタッフは、若手の営業ウーマンです。社長から「マーケティング・オートメーションというものがあるらしいから勉強するように」と言われたようです。

プレゼンは反応が良くない

田中さんは、MAのシステムについて、同じ住宅業界での使用例などを説明します。

「マーケティング・オートメーションとは、御社のペルソナが情報を探して御社のホームページにセッションしてきます。そのお客さまをナーチャリングし、スコアリングを基にいつ営業をかけるかを判断するシステムです。

一定のスコアになったら、営業が電話するとか、セミナーの開催を告知して、リアルで出会う場面を作るまでをオートメーションで行います。

そのために、御社のホームページにセッションした場合に、何かペルソナにとって有効な情報をダウンロードできる仕組みを作り、コンバージョンしてもらうようにします。こうしてメアドを収集します。ここまではプル戦略です。

今度はプッシュ戦略で、ステップメールでリードナーチャリングを行います。このようにしてリードを御社のファンにすることで、実際に営業マンが会ったときには、一定のファンになっている状態にします。すると営業の成果も出やすくなります。

もちろんスコアリングだけではなく、どのページからどこへ行ったか、どのくらい滞在していたかなど、Googleアナリティクスより分かりやすく簡単に分析できるツールとなっています。便利ですよね?」
と田中さん。

それを聞いていた、ベテランの営業リーダーが発言します。
「セッションやらリードやらコンバージョンやら、横文字が多すぎてよくわからん」

そこで田中さんは、少し日本語を交えて説明をし直します。

質問には答えたものの…

営業リーダー「システムは良いんだろうけど。そもそもどうやってセッションを集めるの?」
田中さん「それは、いま一番効果的なのはやはりコンテンツ・マーケティングだと思います」

「コンテンツ・マーケティングってなに?」
「質の良いブログをアップすることで、オーガニックのお客さまを呼び込むことです」

「オーガニックって?」
「自然検索のことです。GoogleやYahooで検索すると検索結果が出ますよね。このことをオーガニックっていいます」

「へえー、そうなの。で、そのブログは誰が書くの?」
「もちろん、御社のスタッフです」

「今だって、ブログを更新するの大変なのに、ムリムリムリ」
「私どものシステムで成果を上げている会社さんは、ブログスタッフがいます」

「うちじゃ難しいかなあ。せっかくシステム導入しても宝の持ち腐れになりかねないなあ。御社では書いてくれないの?」
「うちはシステムを売っているだけなので。ただブログを書くコツについての、ホワイトペーパーがあります。参考になりますよ」

「ホワイトペーパーって?」
「お客さまのようにブログの書き方で困っている会社様向けに、分かりやすく解説した資料です。弊社のホームページにありますので参考になると思います」

結局、この日は、
「ん~、聞けば聞くほどワケが分からん。ゆっくり検討するので、こちらからご連絡します」
と営業リーダー。

なんの収穫もなく終了でした。

「お客さまの立場に立っているか?」という検証

では、相手の立場に立つとどう見えているか、を考えてみましょう。

お客さまに伝わる言葉を使っているか

あえて厳しい事をいいます。
この事例だけでなく、クラウドシステムやWEBマーケティング、ホームページ制作などを販売している企業の営業担当者の多くが、ネット関連のカタカナ言葉を乱発して、お客さまを困らせています。

「自分たちは先進的なんだ」「そんなことも知らないほうが悪い」的な態度の担当者も見かけます。
これでは全くお客さまの立場には立っていません。成約率が極めて低くなるのも当然です。

基本的に、50歳以上でネット関連のカタカナ語を完全に理解している人は、ほぼいないと考えられます。
若い人でも、ネットの専門用語に精通している人は案外少ないものです。

そこで、カタカナ語を使う場合は、丁寧に意味を伝えながら説明するか、そもそもカタカナ語を使わないで説明できるようにするほうが良いでしょう。

お客さまが受け入れやすい身だしなみか

次に、ファッションやヘアスタイルについてです。
IT系やネット系の方々は比較的自由な服装で、ヘアスタイルもかなり独創的な方が多いように思います。自分のしたい格好をすること自体はかまいません。

しかし、お客さまから見ると、どう思われるでしょうか。
会っただけでビックリ、ひとまず距離をとってみてみよう、という人も少なくありません。

個性的なおしゃれは良いのですが、常に自分のスタイルを貫くことが良いのか、といえば違います
何事にも柔軟性が必要です。

これから営業しようという会社の企業風土を考えて、相手が受け入れやすい好感の持たれやすいファッションにしたほうが、成約確率は上がります。

商品やシステムの仕様で断られるなら仕方ありませんが、その他のところで断られてしまうのは本当にもったいないと感じるのです。

お客さまは断る理由を正直に話してくれない場合がほとんどですから、この点も考えてみてはどうでしょうか。

「お客さまの立場に立って」の本質

相手が納得できる具体的な方法を伝える

この事例の会社、15名の住宅会社でMAを導入する場合、「導入費やランニングコストに見合った成果を出すにはどのようにすれば良いか」の提案をしなければなりません。
仮に記事ブログをしっかり作り込む必要があるなら、その具体的な方法を提案する必要があります。

例えば、ブログを書く方法としては、
1.社内で順番に書く
2.誰か(ライター)に書いてもらう

  • 2-1 ネットで探す
    1文字0.8円という激安もあり、仮に1,500文字の記事を書いてもらうと1記事1,200円。安いが品質は保証できない。特にコピペは完全にNGなので要注意。
  • 2-2 プロのライターに依頼
    1記事15,000~30,000円。目標は100記事なので、予算は150~300万円になる。ネットにアップする前に、必ず内容のチェックをする。

こんな感じで、ブログの手段と社内で書く方法をしっかりと伝えることが「お客さまの立場に立つ」ということになります。

さらに言えば、その業界でMAを使う場合の留意点を伝えると、お客さまの信頼感が高まります。

実際に住宅業界は集客で困っています。WEBマーケティングもあまりうまくいっていません。
その原因のひとつは、住宅業界が「生産者志向」だからです。

しかし「顧客志向で」といっても伝わりにくいものです。
そこで、家づくりを考えている人の目線でブログを書くようにしたらいかがでしょうか、といった具体的な提案をすると、お客さまの反応は良くなります。

お客さまにとってのメリットを提案する

いずれにしても、スタッフが50人以下の企業を対象にする場合は、ネット系の販売のハードルはかなり上がると思います。その費用対効果が分かりにくいからです。

それでも、経営者が「このシステムを利用するほうがメリットがある」と判断すれば、導入は早いのです。

お客さまの立場に立って、どうすればお客さま自身のメリットを感じられるかを、徹底的に想像してみることです。
そして何度かトライ&エラーを繰り返せば、営業のテンプレートができるでしょう。

これが成功への近道だと考えています。


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