ご承知の通り、平成25年3月末日をもって中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法と言います)通称:モラトリアム法が終了しました。
基本的に国は中小企業の倒産を増やしたくありません。
従っていきなり「明日から元金の返済をよろしく」とは言ってこないはずです。
しかし金融機関(以下、銀行と言います)は元金返済を3年間も猶予(待っていた)したのですから、もうそろそろ元金を返済してくれても良いのではないか、というのももっともだと思います。
そもそも法の主旨は、リーマンショック以降、日本の中小企業の資金繰りは大変であり、中小企業から借入金返済の約定変更の申入れがあったら受けてあげなさい、その間に中小企業側は、資金繰りを立て直して事業基盤を固めなさいということでした。
ところが実際には、私どもの感覚では円滑化法を利用した30~40万社のうちの90%以上の企業が、元金の一部でも返済したら資金繰りが極めて厳しいことになる、と思っています。
そこで、国(金融庁)の円滑化法の対応について、ざっとまとめました。
■円滑化法に向けた国の方針
円滑化法終了後の対応は大きく二つに分かれます。「支援協議会コース」と「銀行と相談コース」です。
■「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」とは何か?
支援協議会とは、各都道府県にある「再生支援協議会」のことです。
国は平成24年4月20日に「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」というものを公表しました。http://www.fsa.go.jp/news/23/ginkou/20120420-2.html
その主旨は「中小企業の真の意味での経営改善につながる支援を強力に押し進めていくための環境整備を行っていく上で極めて重要な一年で、関係府庁(内閣府・金融庁・中小企業庁)によりまとめた政策」です。(もう1年前に出ているものです)
その主な施策は、
(1) 金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮
(2) 企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化
(3) その他経営改善・事業再生支援の環境整備
です。
より具体的なポイントとして、
(1)では、中小企業に対する「出口戦略ヒアリング」をすること、抜本的な事業再生、業種転換、事業承継等の支援が必要な場合には、判断を先送りせず外部機関等の第三者的な視点や専門的な知見を積極的に活用する
(2)では、再生支援機構と再生支援協議会の機能連携をし、特に支援協議会に持ち込まれた案件の標準処理期間を2か月に設定し、その処理目標を全国で3千件程度とする
(3)では、地域における中小企業支援のための「中小企業支援ネットワーク」を構築し、事業再生ファンドの設立を促進する
などとなっています。
ここで注目していただきたいのは、以下の3点です。
ⅰ 抜本的な事業再生や業種転換が必要な場合は、「出口戦略」を明確にしていくこと
ⅱ 支援協議会に持ち込まれた案件の処理は迅速にするが全国で3千件しかできないこと(各県平均60件程度。実際には受付担当者が少なく、とても処理できていない)
ⅲ 地域における中小企業支援の環境づくりをすること
「出口戦略」とは、現状の事業がかなり厳しい状況にあるならば、支援協議会に持ち込むにしても、それ以外の方法を取るにしても、色々な対策を講じた後には、どのようなカタチで再建ができるのか、まさにこれから始めるところ(現状)を「入口」とし、終了したときが「出口」となるそのプロセスを描いたものを言います。
■平成24年11月1日付 金融担当大臣談話http://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/2012/20121101-1.html
この時点で円滑化法は平成25年3月末で終了することが前提の金融担当大臣談話が発表されています。この談話の内容は「円滑化法が終了しても、円滑化法の主旨を踏まえた対応を金融機関に求める」ということです。
■平成24年11月30日 閣議決定「日本再生加速プログラム」http://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/…/1130_01taisaku.pdf
これは野田内閣が最後のあがきで作ったものですが、一応今のところ生きています。このプログラムの16ページに「中小企業の事業再生支援強化」が記載されており、それに必要な法整備をすることも明記されています。しかし政権が変わったので方法は変わると思います。
■政権交代で閣議決定!
「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月11日閣議決定)で、前民主党政権と同様に円滑化法は終わっても銀行には同様のレベルで対応しなさいと決定しています。http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130222-1.html
そのパンフレット
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130222-1a/01.pdf
■企業の現実的な対応方法は?~「支援協議会コース」か「銀行相談コース」か
「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」には、再生支援協議会に持ち込むことは書いてありますが、その案件の目標は3千件。しかし4月~9月の実績はわずかに153件にとどまっています。
ところが全国で円滑化法を利用した企業数は30万社~40万社(中小企業庁発表)。仮に3千件としても全体の1%にすぎず、99%はどうするのか、全く明記されていません。
実は再生支援協議会と相談する案件は、ある程度銀行の方で選別して既に対象となる企業に、銀行から「支援協議会を使いませんか」と話を持ち込んでいます。しかしその数は非常に少ない。
一方、支援協議会に持ち込まない大多数に対しては、まだこれからの対応というのが実状です。
私どもが対応している金融機関も今のところ、極端に無茶な申入れをしてきているケースは聞いていません。
しかし銀行側からは「3月末までは円滑化法の延長に応じますが、社長、その後はどうしますか?」という問いかけは、あちらこちらの銀行から聞かれています。
そこで必ず要請されるのが、「事業再生計画書」。それも実現可能で抜本的な対策を講じた「実抜(じつばつ)計画書」を問われています。
今までも、銀行が企業に融資をする際には、その企業の事業計画書がなければダメでした。しかし多くの社長は、融資を受ける際に自分で事業計画書を作って持っていった記憶はないと思います。
では誰が作ったのか?
実は銀行の担当者が、社長からの聞き取りで作っていたのです。
しかし今度の事業再生計画書は、社長自身が作り上げなければならないことになっています。
これは少々やっかいです。この事業再生計画書の策定は我々プロのコンサルタントでもやっかいですから。
お問い合わせはこちらまでどうぞ045-620-7130受付時間 10:00~18:00(平日)
お問い合わせ